どうすればいいのかな (3年:学級活動)

ねらい   自分の身体は自分のものだという意識を育て,不快な感覚を受ける行為に対しては,はっきりと「NO!」を伝える力を育てる。



本時案
学習活動 予想される子供の反応 教師の働きかけ
1 性被害の実態を知り,性被害を受けた子どもの気持ちを考える。  ○被害者はどんな気持ちかな?
・そんなのいやだな。
・触られたくないな。
・いやだって言えないのかな。
・いろいろな被害があるんだな。
・加害者にはなりたくないな。
・スカートやズボンの中に手を入れられた、 スカートめくりやズボン下ろし、体の性的な発育を噂にする、性器を触られたり見られたり、性器を見せられたり触らされたり、卑わいな言葉を投げつけられた、入浴を覗かれた等の被害事例を話す。

・大人からの性被害だけでなく同級生や年長の子どもから幼い者への性的いじめ・セクハラ等もあることや、男児・女児とも被害者にもなるし、加害者にもなり得ることを話す。
2 被害にあいそうになった時や被害にあった時の対処の仕方を話し合う 
○どうしたらいいのかな。
・いやって言えるかな。
・すぐに逃げるといいよ。
・捕まらないように離れているといい。
・大声を出すのもいいな。
・「親戚のおにいさんに膝に乗るよう誘われ,口止めされた時」「知らない人に腕をつかまえられた時」「友達に遊びで浣腸された時」の3つの場面を想定し,対処法を考えさせる。
3 役割演技をして気持ちの伝え方を練習する。
 ・シェアリング
○気持ちの伝え方を練習しよう。
・はっきり言えるよ。
・黙っていてはいけないな。
・自分を守るために,いやとはっきり言うことや,被害にあったら迷ってないで信頼できる大人にすぐに話すこと,人の嫌がること・不快に思うことはしないことなどを確認する。
4 本時を振り返り感想を書く。 ○今日の学習はどうだったかな。
・いやな時の言い方が分かったよ。
・人にいやなことをしないようにしたいな。
・自分自身の感じ方をきちんと表現できる力を持つべきであることを伝える。
・安心し,自信を持って生きる権利が誰にもあることを伝える。




子どもの反応

【活動2】どうすればよいか、また自分だったらどうするか考えてみよう。

1 やえこの場合(加害者が親戚のお兄さんの場合)
・「やめて」と言いたい。なぜなら身体を触られたら嫌だし、プライベートゾーンもあるから。
・もし自分だったら「やめて〜」と言う。「言わないでね。」って言われても絶対言って、外に飛び出す。それで警察に行って言う。
・「警察呼びますよ。」と電話の所に行く。
・こんなことされたら逃げる。追いかけて来たら、くれた腕時計に「いらない。」って手紙を書いて男に当てる。
 主人公の気持ち悪さには十分共感できていた。嫌なことは、はっきりと声に出して嫌だと伝えることが大切であることにも、子どもたちは気付いていた。

2 ひでおの場合(加害者が知らないおじさんの場合)
・逃げる。腕をつかまれたら大声を出す。車に乗せられたら防犯ブザーを鳴らして窓を開けて「助けてー」と大声を出すのがいいと思う。
・大声で「助けて」と言い、走って近くの家やお店に逃げ込む。悩む前に走って逃げた方がいいと思う。こういうことにあわないためには、1人で帰らないことや1人で公園で遊ばないことだと思う。なるべく人がいる所で遊んだ方がいいと思う。
・知らない人に騙されることもいろいろある。例えば「楽しい公園に連れて行ってあげるよ。」とか言う人がいる。名前を言ったり電話番号を言ったりしたら誘拐されることがある。友達の電話番号も教えてはいけない。
・断って帰る。名前も言わないでそのまま無視して帰る。
・「ぼくは急いでいるので帰ります。」と言って猛ダッシュで逃げる。
・「見なくていいです。」と言って走って逃げる。そして「助けて」と声を出す。もしつかまってしまったら、一番痛い所を蹴る。そしてどこかの店に駆け込む。それから母に連絡する。
・自分だったらウソの名前を言って、その人が手を持ってきたら足で蹴ってお腹を殴る。 それで倒れた時、速攻で逃げたい。
・ぼくは嘘をつかれたらこう言う。「人の身体をつかんではいけません。」こんな時は警察を呼ぶ。
・すぐに断る。
・こんな時、周りを見て、家があったら「助けてー」と叫んで助けてもらう。もしそれもだめだったら「早く帰らなきゃ。」と話をそらすといい。
・知らない人が話しかけて、ひでおみたいに聞かれたら、名前を教えないで「いいです。」 と言って逃げて、追いかけてきたら大声で助けを呼ぶ。
・もしこういうことになったら道草せずにまっすぐ家に帰って家族に知らせる。もし腕をつかまれたら腕を振り切って逃げたい。それでも振り切れなかったら防犯ブザーか大声を出して助けを求める。
・自分だったら「子犬がいるよ。」と言われても騙されずに手をつかまれる前に逃げて、おじさんが見えなくなる前に防犯ブザーを鳴らして助けを呼ぶ。
・私だったら名前は言わない。犬をあげると言われても「いいです。飼っていますから。」
 と言って「助けて。」と叫ぶ。この全部をする。
 はっきり声を出すことが大切なことに子どもたちは気付いていた。しかし、いざとなった時に、思っているほど確実に声を出すことができるかどうか、疑問の声はなかった。「蹴る」や「殴る」といった意見もあり、自分の力を過信しているのではないかと感じる場面もあった。
 また「防犯ブザー」の効力についても、いささか過剰な期待を持っているのが気になった。防犯ブザーは人のいない所で鳴らしても、あまり効果はないと思われる。また、例え他人に聞こえる大きさであっても、人の声ほどには注意を引くものではないのではないかと思う。「防犯ブザーを持っているから大丈夫。」というような過剰な期待感を子どもに持たせないような働きかけが必要だと感じた。

3 みのるの場合(仲よしの友達から、遊びのつもりで浣腸された場合)
・自分なら先生に言う。
・K君と5年のO君が2人で、なんかすごく笑いながら浣腸をしてきて、「やめて」と言ったら逃げられた。プールの時にKAさんが浣腸をしてきた。
・よくKA君が人に「にひひ」とか言って浣腸してくる。自分だったら逃げて、追いかけられたら、ちくる。
・言いたいことはちゃんと言いたい。
・先生に言うか、その人のお母さんに言いたい。
・言ってもダメなことがあるから、そこが難しい。
 最後に出された意見、「言ってもダメなことがあるから、そこが難しい。」が一番現実的だと思った。加害者が仲のよい友達の場合でも、相手に悪気がなかったとしても、人の嫌がることは「いじめ」であり、性犯罪の仲間なのだということを強調し伝えた。



【活動4】学習のまとめ

・人にいやがらせをしたり、エロをしないということをしっかり頭に覚えて、もし自分がこうなったら、今日の勉強を生かしたい。
・人の嫌がることはいけないんだなと思った。
・性被害にあいたくない。
・もしこんなことが起きたら、ふり切って、母に言ったり先生に言ったりする。
・ひでおくんがかわいそうだと思った。
・いやな気持ちになるから言うことに従わない。
・浣腸とか、すごくいけないと思った。遊びとかのいいわけもいけない。知っててやるのはもっといけない。
・今日はいろいろ勉強したのでそれを生かして、もしこんな目にあった時は、はっきりと言おうと思う。
・さわられたくない。だって気持ち悪いしいやだ。
・こんな気持ち悪いことをやってどこがおもしろいのか知りたい。
・口止めされても言わなくてはいけないことは大切だと思った。誰かに話したらすっきりするので、言った方がいいと思う。被害にあわないよう気を付けたい。
・人がいやなことをしてきたらどうすればいいのか学んだ。知っている人や友達、中には知らない人もいるので、そういう時、「やめて」と言えばいいんだなーと思った。
・いやなことをされたら、やめてと言うことがいいと思う。とても大切なことだと思った。
・知らない人について行ったりしない。しかも知らない人が声をかけてきたら逃げる。
 もしされたら必ず誰かに話したい。
・友達だけどやってくることもあるのを知った。
・もし(被害に遭ったことを)信じてもらえなくても何回も言いたい。
・私なら逃げる。
・あんなにべたべたされると気持ち悪いしいやだし、恥ずかしい。
・私もこんなことされたくない。だからちゃんと言葉で言いたい。
・さわられるのはいやだけど、やえこちゃんは我慢しているのだと思った。
・意地悪する人がいると困ると思った。

最後に、マリー・ウァブスの「もうこわくない」の読み聞かせと、山本直英の「さわってごらん ひとのからだ」のブックトークをした。




【参観した保護者の感想】
 あまり日頃、子どもに言わない内容だったので、参観して勉強になりました。今日の授業でやったこと、勉強したことは、万が一子どもが、そのような場面に直面した時に、「あ、これかも・・・」と思い出し、何かしらの対応ができるのではないかと思います。我が家も日頃からその日にあったこと、困ったことなど、何でも話し合える雰囲気をいつも作っておきたいと思いました。

 とても子どもたちにも分かりやすくよかったと思います。テレビなどで事件を知り、子どもに気を付けなさいよくらいにしか言えてなかったけど、練習(逃げる)をするのとしないのとでは子どもも心構えが違うと思います。ありがとうございました。

 性被害とは身近にあるもの。知っている人からの被害には、子どもたちは、どう対処したらいいか戸惑っていた。例え遊びと思っても、人の嫌がることはしない、またさせない強い心を持つことが必要。子どもの小さな変化を見逃さないよう、日頃からよく話を聞いてあげること。何でも話のできる親子関係であることが大事だと改めて考えさせられました。



COPYRIGHT BY Yoshiko 2007
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